海フェスタ”大村湾”の当町での活動を振り返って
ご存知ですか?
「うさぎ追いしかの山 こぶな釣りしかの川・・・」
100年以上前につくられた文部省唱歌です。これは、見事に「森と川と人と生き物との共生」を歌い上げています。そして、
「われは海の子 白波の さわぐ磯辺の松原に・・・我が懐かしき住み家なり」
「ふるさと」と「われは海の子」。私たちの世代、50年前まで、この2つの歌は、「“森と山と海に寄り添う”そんな風土や気質を大事にしよう。」と、日本中の子ども達と親のテーマソングとして歌い継がれていました。豊かな自然環境こそが、私たちの「ふるさと」。そんな時代は、確かにありました。
この50年、私たちは、便利であることを豊かさだと思い込み、便利さだけを追い求めてきました。しかし、その便利さの陰に大切な忘れ物をしてきたように思います。それは「自然との共生」です。この忘れ物を取り戻そうと、平成9年の河川法改正では「河川環境の整備と保全」が追加され、治水・利水・環境の三つを両立してこそ、真の豊かさだと訴えられるようになりました。河川法の解釈は、一般の私たちには価値として伝わらず、大学等の研究機関やそれにかかわる行政の各専門部署、施行業者及び民間会社の枠内でとどまっているという印象を受けます。これまで数回参加させて頂いた、全国や九州の川のワークショップでも、そのような想いを抱き続けてまいりました。
私たちの住む日本は、民主主義の国です。・・・多くの人の参加が求められています。
「『うさぎ追いしかの山 こぶな釣りしかの川…』と皆さん、歌ってください。」
「豊かな水辺の環境を守ってください。」
と、研究者や専門家にも一番大事なことですが、関心のある人々がどんなに熱心に、まじめに勧めても、子どもたちやその両親、周りの大人たちや老人が「水辺を守ろう」「森を守ろう」と、そこに寄り添わないと、専門の研究だけでは、学問のための研究室レベルのムーブメントに終止し、オープンに、自由に、大多数の方々が集合してくれませんし、日本の豊かな風土は、砂の上の建物に終わってしまいます。
私たち「彼杵おもしろ河川団」は、幸いなことに“強い絆で結ばれた奇跡のネットワーク”が確立されています。筑波大学「人と川のゼミ」、JRRN(日本河川・流域再生ネットワーク)、福岡から河川土木と河川生物の民間コンサルタント会社、国交省職員、長崎県北振興局河川課、当町の自治体や民間ボランティアグループ等、それぞれのスペシャリストの集団が集合されています。これまでは「彼杵小学校総合学習」「川の生き物の遡上」「どじょうの養殖」などを推し進めてきました。そのような中、今年7月の北部九州の豪雨での地滑りと、杉・ヒノキの里山の崩壊のニュースに私たちの「目がくぎづけ」となり、「大事なものを忘れかけていたのではないか。」と、改めて気づかされるきっかけとなりました。ちょうどその頃、西九州大学短期大学部の津上ゼミ(幼児教育)と、国の公的研究機関である土木研究所の河川生態チーム(共に女性スタッフ中心)との出会いが重なり、「うさぎ追いしかの山 こぶな釣りしかの川…」を解りやすく“絵本”にして、そして“歌”にして、多くの子どもたちや保護者の方々に理解してもらえるような活動を広げ、「今まで関心のなかった人々に、私たちのムーブメントを伝えていこう!」と、そのような機運が盛り上がってきました。ここで、また、私たちの夢に長崎大学教育学部地域教育支援センターの参画も実現しました。
来年11月(予定)に、「東彼杵グリーンハートホール」にて「森・川・海 緑と水でつなぐワークショップ In 東彼杵」を、これまでの集大成と新たなキックオフとして開催します。子どもたちや学校、保護者や地域の方々を交えた発表会です。よりわかりやすく、オープンに、地域だけでなく、近辺の自治体の方や長崎県単位への呼びかけを考えています。
やっとここまできた。10年以上を要し、たどり着けました。
「志を果たして、いつの日にか」
いつの日にかは、あと5年かな、10年かな。森を健全な森林多様性の里山にし、生物と共生できる川にして、そこに流れ込む大村湾流域の自治体に波長を伝え、地元の閉鎖性海域「宝の海 大村湾」を取り戻す。
でも、私たちは、その夢を形にするために5年単位で少しずつ、ちゃんとした成果を出してゆく。そうでないと、「宝の海 大村湾」は実現しません。夢は語るものではありません。夢は、ちゃんとしたデザインを描き、形にして、それを積み重ねてこそ大きな形になり、実現します。
~ 謝辞 ~ 2017年に実施した「海フェスタ”大村湾”」を通じて、当町で10年以上前から続けてきた「水辺の活動」への地域全体と町内外から関わってくださった皆様の取り組みがさらに発展し、意識の高揚を図ることができましたことを、心から感謝いたします。 |
2017年11月
東彼杵清流会 顧問 池田健一