「ミスターイエローブルース」大木トオルさんの「セラピードッグのお話と『スタンド・バイ・ミー』」
これは、当方のHP、カスタムプロホワイト「答えは風の中」で長年親交のある、キャンプのフリーライター、町田厚成さんがタイムリーにその内容をリポートされています。
「答えは風の中」のブックマーク、「町田の独り言Ⅱ」で「大木トオル、ブルースを語る」「大木トオル、筑波大学セラピードッグ講演」を始め、皆様に覗いてもらえたら、プロの編集者のリアルな文章が参考になりますよ。
当方は、この一件に関して、視点を変えて述べさせてもらいます。そのテーマは、今の若い人、特に理系の学生さんに向けた「コミュニケーション論」の展開です。
熱く、ソウルフルに想いを語られ、最後に魂を込めて『スタンド・バイ・ミー』を熱唱された大木さんが、筑波大学に来られてから、昼食、大学を去られるまでの立ち居振る舞い、表情の変化、動作の洗練度、の3点をじっくり観察させていただきました。
左は『スタンド・バイ・ミー』で、日本でも有名な「スイートソウルの王様」BEN.E.KINGさん、右は大木トオルさんです。大木さんは、高校生まで先生から「ドモリ君」と呼ばれ、その吃音を治すために、歌を歌い始められ、今から50年近く前にカバンひとつでブルースの本場、アメリカに渡られ、シンガーとしての地位を確立されました。
彼がシンガーとして成功された事を私なりに説明しますと、その大きなファクターは「コミュニケーション力」です。観衆を前に、大木氏のステージ上で心打たれたのは、
①真剣に、熱く、何かを伝えようとされる教師の顔、無邪気な少年の顔、それは人々を惹きつけます。
②歩く、腰かける、立つ、そして話す、その動作の完成度。
③他人を立てる、譲る、そして自分をドーンと出される、それは自然なさりげない落差です。
上記の3ポイントは、大木氏が、言葉も違えば文化も違う異国の地、アメリカで「自分の歌を歌いたい。」その一心で努力した結果、自然に身につけられたものだと推測されます。 そう、ブルースの世界に、そして、アメリカに温かく迎えてもらえたのは、壁にぶつかり、涙を流され、思い切り泣いて立ち上がられた経験から得られた完成度の高いコミュニケーション能力の賜物です。
このCDジャケットをよく見てください。この表情!TORU and BEN.E.KING The MANHATTAN Brothers。
TORUさんとBEN.E.KINGさんは、「魂の兄弟」そのものでしょう。これを対話といいます。コミュニケーションといいます。
今日本の小学校の低学年から英語の授業が始まっていますが、英語を習うのは語学力の技術習得です。でも、重要なのは、そこから生まれる外国人と真剣に対話するスタンス、それも積極的なコミュニケーションの展開です。それと同じような展開を、以下述べさせて頂きます。 |
筑波大学の学生さんとは、私が信頼し、尊敬している白川先生と、筑波大学の卒業生の坂本君(彼とは「声が小さい。」「白黒はっきりしろ。」「周りにあまり気を遣うな。」といつも叱り続けながらも、もう10年近く親交があります。)、この二人を通じてのあなた方とのお付き合いです。もう大学生の皆さんとは4年目に入ります。振り返ると皆様まじめで研究熱心。特に理系の学生さんはデータをまとめる事に関しては、とても優秀だと思います。
でも、人と人の関わりや、微妙な人間関係は目に見えないもの。その人間観察力と自身の表現能力は、今ひとつ欠けているように思います。それに拍車をかけているのがSNSなどの非接触コミュニケーション。それにもうひとつ、筑波大学は、国が目指した理想の「研究学園都市」で、あらゆる施設、研究所、国や民間の施設までが近距離に点在します。そして、筑波大学周りの市民の方々も、生徒達に対しては、優しく温かく見守ってくださっています。しかし、安心しないでください。一歩社会に出ると、そんな理想都市だけではありません。生きていくうえで絶対的長所はありえないのです。
私は、50年前の話ですが、近畿大学に入り、バリバリの体育会系、ワンダーフォーゲル部に入部しました。そこは、1年生「家畜」、2年生「奴隷」、3年生「人間」、4年生「神様」のシステムでした。私は、その抜けられない「理不尽さ」に戸惑いました。でも今考えると、その理不尽に対応する事こそ大人になるスキルだと思えます。だって、異国の世界に4年間滞在しましたが、社会に出てずいぶん役に立ちました。「絶対的短所」も後で役に立ったのです。
今回のシュノーケル教室と大木トオルのセラピードッグ講演は、今、情報化社会で便利になったバーチャルの世界では決して体験できない、からだ全身いっぱい使ってのコミュニケーションのひとつの展開をさせていただきました。この体験で何かを掴んでください。きっと何かの役に立つはずです。
最後に、「彼杵おもしろ河川団」は少しずつ成果も出てきました。皆さまのおかげです。関わる全ての方々のおかげです。ここまで成果を出せたのも、ひとつのスキルです。
本当の主産物は、なぜ、さまざまな立場や年齢、肩書きの違う方々が集合、整列され行動されているのか、考えてください。そう、成果の主産物は技術でもハードでもありません。ソフト、人と人とのコミュニケーション、それが大いなる産物、主要成果です。
また今度皆様とお会いできる日を楽しみにしています。「返事は大きく」「明るい声で」「はっきりと」「動作も若々しく」。それは今後の生きるスキルになります。私達から、「こら!カゲロウ軍団!」と怒られないように、ご注意のほど、よろしくお願いいたします。
池田 健一