絵本出版プロジェクトが再始動しました
私たちは数年前から、東彼杵と大村湾を舞台に河川団の活動を題材にした絵本の出版を目指していました。
その企画が再始動し、以前東彼杵町役場まちづくり課と共作した絵本の原文『豊かな宝の海を そのぎ母の森大作戦』※を改め、『森は海のお母さん 彼杵母の森大作戦』としてリメイクしました。
大村湾は山や森が海にとても近く、世界的にも珍しい閉鎖性海域で、陸での環境がひとたび変化すると海にもまともに及びます。それゆえ、生態系や環境問題のことを子供たちに伝えやすい、生きた「環境教育の野外教室」となっているのです。
これを絵本として出すことで、地域の自然を知ろう、守っていこうという環境教育のモデルを後世に残し、繋いでいくことができます。東彼杵町や大村市、時津町など、大村湾を囲むたくさんの周辺自治体の教材として、次の世代の子供たちに、お母さんお父さんが伝えていく未来を夢見て企画しました。
以下が原文の内容です!
アキラは、お父さんとお母さんと一緒にお散歩です。今日はお陽様がキラキラと輝き、そよ風がふく、いい天気です。ちょっと小高い丘までいくと、アキラの住む小さな町が一面に見わたせました。
「おい、アキラ、いつもみんなで行っているあの岬が見えるだろう。あそこは山から川が流れて、海に水がたどり着く、そんなところなんだよ。あの大きな松林の下でよくお弁当を食べに行ったり、カヌーであそこから海に遊びに行ったりしている、あの場所だよ。」
「うん、見えるよ。あんなに景色のいい所だったんだね、きれいだね。あの景色は。この丘の上から見ると、はっきりわかったよ。また、行こうよ。」

「そうそう、あの場所は、彼杵川に山の方から流れてきた水が、海に流れゆく玄関みたいなところ、海と川の水が一緒になる大事な場所なんだよ。」
「それ、河口って言うんでしょ?学校で習ったよ。」

「そうそう。河口は、海の魚や川の魚、それに貝やウナギやタコやイカさんが一緒に暮らしている、不思議な場所なんだよ。」
「ほら、よくごらん。山の上から流れた水が川を通って、海へ流れていくのが、よーく見えるよ。キラキラ海が光っている、あんなところだったんだ。」
「アキラの住んでいる目の前の海は、大村湾、それを『琴の海』と言うんだよ。キラキラと波がやさしい光に揺れて、琴の曲が流れているような『宝の海』と昔から言われてきたんだよ。」
「お父さんも、おじいちゃんも、その前のずっと前のおじいちゃんもみんなあそこで遊んで、海を見て、大人になったんだよ。」
「お父さん、また、松の木の下でお弁当を食べて、海に遊びに行こうよ。」
「ああ、また行こう。あそこは大きな緑の松林と海に突き出ている岬、この町一番のすてきな場所だよ。」
「そうそう、お父さんたちは、今、みんなの海『琴の海』を大事にしていこうと、みんなで集まって、何年も前からやっている事があるんだよ。」
「何をしてるの?」
「そうだね、アキラもわかるだろう。最近は夏になると、ドーンと大雨が降るだろう。それで、あの河口の生き物がいなくなってしまっている。みんなで川や海の生き物もまた戻ってきてほしいと活動しているんだよ。」
「どんなことしてるの?」
「それはね、ドーンと大雨が降ると、山の上の方から岩が転がってくるし、泥がどろどろ流れてきてお魚さんや貝やウナギが、大変苦しい目にあっているんだよ。」
「なんで?」
「それはね、真っ黒な泥が流れてくると魚やウナギの泳げる生き物は遠くまで逃げていけるけど、動けない、泳げない。アキラがいつも食べているアサリ貝や昔はたくさんいた大村湾のヒオウギ貝なんかは、今はみんな死んでしまって、いなくなっているんだよ。」
「そうだね、ぼくらだって、ゴロゴロ岩や、ドロドロ泥が流れてきたら死んでしまうね。」
「ぼくらは歩いて、走って逃げられるかもしれない。でも、海の中のアサリ貝は動けないから死んでしまうね。」

「そう、海に生えている『海の中の森』海藻の生えた森もなくなってしまうね。そんな海辺と川辺の生き物にとっては、『海の中の森』はとっても大事なんだよ。」
「それで、お父さんたちは、泥や岩が少しでも流れてこないように、ドーンと雨が降ったとき、雨の水を大きなスポンジみたいに吸い込んで小さな自然のやさしいダムになる、どんぐりの苗を少しずつ植えていき、『やさしい森のダム』を作っていこうと始めてるんだよ。」
「どんぐり!僕どんぐり大好きだよ。」
「そうだね。アキラが大きくなった頃、小さなどんぐりの苗は大きくなって、どんぐりの森は雨が降っても雨水をスポンジみたいに溜めてくれる『やさしい森のお母さん』になってくれるよ。」
「そしたら、そのお母さんたちはきっと、みんなで『宝の海』、『琴の海』を、大事な子供のように育ててくれるよ。」
「どんぐりを植えれば、海の生き物たちは元気になるんだね。」
「うん。でもね、ただ植えるだけじゃだめなんだ。それを見に、今から番神山に行こう。アキラも昔登ったことのあるんだよ。」
「あの山だね、よく知ってる。でもあんまり覚えてないな。」

「そうだろうねえ。あの時はまだ、お父さんがアキラをおんぶして登るくらい小さかったからね。」
「今は背も伸びたし自分で歩ける。また違う景色が見えるはずだよ。さあ行こう。」
「うん!楽しみ。」
3人は番神山のふもとに行き、一番上を目指して歩き始めました。
「この周りにいっぱい木が生えているだろう。7年前に、この森から『彼杵母の森大作戦』を始めたんだ。」
「お父さんたちが少しずつ小さな集まりすぎた木を切っていく。そこに子供たちがみんなでどんぐりの苗を植えて、大きくなってください。森に根をしっかり張ってください。そして、やさしい森のダムを作ってくださいと願いを込めていくんだ。」

「え、何で木を切っちゃうの?かわいそうだよ。それに、木を切ったらもっと泥が流れちゃうんじゃないの?」
「アキラ、あっちの森を見てごらん。あそこは木が集まりすぎて、地面が真っ暗だろう。」
「ほんとうだ。地面にお日様の光が全然届いてないね。草も生えてない。」
「そう、あんなところでは草もどんぐりも成長できないし、そのせいで泥も流れてしまうんだ。だから、集まりすぎた木を少しだけ切って、森の中にもお日様の光が届くようにしてあげるんだよ。」
「そうなんだ!地面に光が入れば草が生えて泥も止まるし、どんぐりもすくすくと成長できるね。」
「春になったらまた、そこにどんぐりの木を植えに行こう。」
「ぼくも行くよ。友達も誘って一緒にいくよ。春になるのが楽しみだね。」

3人は頂上を目指して、さらに上へ登っていきます。
「はあはあ、すごい急な石の階段だね。疲れてきたよ。」
「この石段は、参道の頂上まで続いてるんだ。それは遠い、何百年も前の私たちのおじいちゃんたちが、コツコツと石を積んで作ってくれた『森の中のすてきな風景』なんだよ。これもアキラに見せたかったんだ。」
「なぜ、昔の人はこんなに高い所まで石を運んで、階段を作ってきたの?」
「それはね、大人たちが集まりすぎた小さな木を切って、大きな木を育てたり、子供たちが、小さな木を集めてご飯を炊いたり、風呂をわかしたり、そして、大きな木を運んで、家を作ったり、そんなことがしやすいように石の階段の道を何百年も前に作ってくれて、ずっと使われてきたんだよ。」
「そうなんだ。昔の人達は普段から木を育てたり、切って使ったりして生活していたんだね。」
「うん。でも今は、木を燃やしてご飯を炊いたり風呂を沸かしたりすることもなくなった。それに山の木は、家を作るのにもあまり使われなくなった。それで、山を守るには、また山の木を使って、山を守っていかなければならないんだよ。」
「昔みたいに切った木をムダにしないで使ってあげたら、森もきっと喜んでくれる。そう考えて、ストーブやキャンプの薪として使おうと決めて、何百年も昔の人の作ってくれた番神山の参道から山に入って木を切ることを始めたんだ。それが、『森は海のお母さん 彼杵母の森大作戦』なんだ。」
「きっとわかるよ、石の階段を一歩ずつしっかり見ながら、上まで登ってみれば。遠い遠いおじいちゃんのまた、そのおじいちゃんがお父さんに、そしてアキラに伝えたかった事もきっとわかるよ。」


「うん。上までもう少し、がんばって登ろう。」
3人は疲れを感じながらも何とか最後の階段を上り切り、頂上にたどり着きました。
「やっと登り切ったー。すごい、僕たちの住んでいる町がこんなに小さく見渡せるなんて!」
「本当にいい景色だよね。これをアキラにも見せてやりたかったんだ。」

「遠い遠いおじいちゃん達も、アキラと同じように番神山の頂上から彼杵の町を遠くから見渡していたんだね。そして、この町にアキラ達が住んでよかったと思えるように、石を積み上げて、長い階段を作ったんだよ。」
「それが、アキラ達に伝えるおじいちゃん達の、希望の願いだよ。」





番神山に登ってみてください。遠い先祖の方々が石を一つ一つ積み上げて、私たちに伝えたかったことがよく分かります。それは、森や木や岩や水にも神様が宿る、自然に対する畏敬の念です。
これは私たちの追求する不変のテーマの一つです。ぜひ、若い人たちは番神山に登ってください。