彼杵おもしろ河川団 流域の保全活動に参加して
8/29(金)と8/30(土)の二日間、彼杵川魚道の整備と周辺竹林の伐採・利用の活動が行われました。茨城県在住の大学生である遠藤は、今回はじめて彼杵おもしろ河川団の活動に参加させていただきました。
29日は16時頃におもしろ河川団の池田さんにお会いし、その後池田さんの自宅付近にある彼杵川の魚道、”第三の魚道”に向かい、堆積物を除去する作業を行いました。第三の魚道では屈曲した流路を直線化する改良が行われ、約2, 3か月前に完了したそうですが、それ以降流下部に土砂が溜まり魚の通り道が狭くなってしまっていました(写真1)。

そこで今回はこの土砂をなるべく除去して魚の通りやすい流路を確保したのです。
除去作業の中でも鬼門だったのは最近新設されたばかりの傾斜板のすぐ隣に横たわる大きな石でした(写真2)。魚の遡上の際に大きな障壁となることは容易に想像できるため、この大石は速やかに取り除く必要があります。数人がかりでバールとスコップを用い、想像以上の重さに驚きながらもなんとか工夫を重ねて周りの土砂に埋まった大石を掘り起こすことに成功し、流路の外に運び込むことができました(写真3)。その時現場は歓喜に包まれました。この石は、来たばかりの私にとってはただの動かすべき石としてしか見えていませんでしたが、実は周りの皆さんにとっては大変”重い”(2つの意味で)意味を持っていました…! これまでの様々な問題意識、行動、流路改良工事、傾斜板の設置、度重なる試行実験、失敗、苦労が積み重なり、そうした背景の一つの大きな節目として、この大石を動かすということが見えていたのです。私はこのことを河川団の方々から聞き、知れば知るほどに、皆さんの歓喜の輪に入り同じ雰囲気を共にできたことが大変喜ばしくなってゆき、忘れがたい体験へと昇華してゆきました。この『石を動かすまでの背景』については、後日別の記事で詳しく紹介したいと思います。乞うご期待。


30日は竹林の整備と間伐、切った竹の活用に至るまでの工程を実際にデモンストレーションしていただくことで、実際の体験を交えて活動内容の共有がなされました。
午前9時頃に、私を含む筑波大学のメンバーは池田さんと合流し、池田さん宅の裏山にある竹林を見学しました。ここでは竹林の中でも孟宗竹や破竹など植生が異なっていること、種の特性に合わせて適切な竹林の管理方法は異なることなどをご教示いただきました。
その後別の竹林に移動し、10時頃におもしろ河川団の方々をはじめとする一同と合流しました(写真4)。そして実際に竹林に入り、間伐→運びやすい大きさに切断→運搬、の流れを実際に体験しながら学んでゆきました(写真5)。


その後私達は河川団が伐採した木材の集積所として借りている場所に移動し、間伐材がどのように活用されているかを実際の加工工程の見学を交えながら学んでゆきました。
間伐されたばかりの竹は専用の機械に入ると爆音を発しながら細かく粉砕され、あれよあれよという間に竹の粉末が隣に敷かれたブルーシートの上に降り積もっていきました(写真6)。この粉末を袋の中で数日間密封すると竹材に元々含まれている乳酸菌が発酵を促し、農作物の成長を助ける肥料に生まれ変わります。

この竹パウダーの農作物の収量等に対する有効性はまだ十分に検証されているとは言えないそうで、この製品がより農業に対して有効であることが示されより多くの人々が認知・評価するようになれば、より規模の大きいビジネスとしての価値が生まれるのではないかと感じました。 また竹炭としての活用もされており、大鍋に竹を入れて炭を作る様子も見せていただきました(写真7)。さらに、この集積所に集めて保管した間伐材を裁断し薪として販売する事業も行われており、実際に機械を用いた裁断を体験させていただきました。非常に暑い天気の中であったため今回はそれほど多くの作業は行わなかったようですが、そんな暑さに参りながらも活発に言葉を交わし、元気に体と心を動かす大人と子供の姿がそこにはありました。

その後河川団としての活動は終わり、残ったメンバーは放棄され野放図に拡大している竹林の様子や、付近の番神山に位置する妙法寺などを見学しました。この過程でも私たちは様々なことを学ぶことができました。丘陵地一帯に広がる茶畑の拡大やヒノキなどの人工林が手入れされず野放しとなっていることがイノシシの生息地を脅かし、そのために人里に姿を現すという状況が生まれてしまっている、という話が特に印象に残りました。
『流域治水』という言葉が、今回の活動、そしてこれまでのおもしろ河川団の一連の活動には共通して当てはまるようです。川だけでなくそれを育む山にも注目して流域全体で保全を行うことが、地域の水環境と生態系を守るためだけでなく、人々のほんとうの意味で安全な、持続可能な生活を守るためにも必要なのです。今回の活動を通じて東彼杵の自然、そして川海の生き物を愛する人たちの強い情熱に触れ、継続的な活動を実現して美しい自然を取り戻していくためには事業化によって稼ぎを生み出すことでより取り組む動機を得やすい形にしていくことも必要であり、それは十分に実現可能なことなのだということを強く実感しました。
そして、若い世代がもっと自然に触れ、自然と一体になるような機会を増やしていくことがこの活動を大きな形で結実させていくうえで最も大きな動力になるだろうということを確信しました。なぜなら私自身が実際にこの2日間で東彼杵の豊かな環境に触れ、彼等と一体になる中でますます自然が身近な存在に感じられ、より自分ごととして問題を認識するようになったと感じているからです。
【事業としての側面】と【環境教育としての側面】。この両面を兼ね備えているという点が彼杵おもしろ河川団の突出した魅力であり、取り組みを拡大し他地域に広めていく上で最も重要なカギとなると考えます。 今回、おもしろ河川団の輪の中で様々な体験と勉強をさせていただいたことを大変嬉しく思います。ここで学んだことを身近な人に伝え、少しずつ輪を広げていきたいです。広げていきましょう!今後ともよろしくお願いします。
…と、完全にこれでおしまいの流れでしたが、末筆ながら、私の所属する筑波大学白川直樹ゼミの紹介動画を共有させていただきます✨
今日紹介した活動の出発点は、実はこの動画の24秒地点に出てくる風景にあるようです。感慨深い。
筑波大学 国際総合学類
白川直樹研究室
遠藤 拓馬

