彼杵おもしろ河川団、森林ボランティア活動
12/1 に行われた森林ボランティア活動に先駆けて、11/30に池田健一さんから彼杵川流域のお話をお聞きしました。
池田さんの自宅の周囲には、番神山・彼杵川・宅地・田んぼ・竹林のすべてがコンパクトに分布しているため、流域環境の変化を捉えやすいのだそうです。まず、池田さんの自宅近くの竹林にて竹林の概要と適切な管理方法について伺いました。池田さん宅付近の竹林には、孟宗竹や破竹などの植生があり、孟宗竹は稈が写真のように太く切りにくい一方で、生える間隔が広いという特徴がありました。
破竹は孟宗竹に比べ、細い一方で密集して生えるという特徴があり、木に比べて根を張らないため土砂災害の危険性が上がるといいます。しかし、適切な維持管理をすれば日が当たり、筍が生えてくるそうで、それを活用した筍のレトルトパックを試作しているそうです。
その他にも、こうした活動は里山林の地域環境保全や地域資源利用といった活動に該当するため、県から活動費用が出るそうです。こうした制度を活用して利益を出しつつ、環境保全や防災活動にも取り組めるというのは、素晴らしいことだと感じる一方で、その大変さや、伐採した竹の利用方法については、今後考えていく必要があると感じました。
その後、彼杵川の魚道を見学しましたが、魚道の入り口には葦が生い茂っており、作るだけではなく、その後の維持管理も重要であることを実感しました。このような植物による魚道の侵入だけではなく、魚道内に上流から流れてきたものが堆積することによって本来の役割を果たせなくなってしまうため、定期的なメンテナンスは必須であり、ここにも多大な労力がかかることが伺えました。本事例を通して、ランニングコストについて考える良いきっかけとなりました。
さらにその後、串川に赴き、彼杵おもしろ河川団と県北振興局河川課が考案した魚道の見学を行いました。前述の彼杵川のものとは違い、木でできた簡易的な魚道になっています。しかし、実際に鮎の遡上が確認されたそうで、今後のさらなる鮎の確認に期待が出来るところです。杉の赤木でできた魚道はもう10年も持っているそうで、簡易的でありながら、そのコストや使っている材料、耐久性を見ると非常に魅力的だと感じました。
12/1 には、樹木の伐採を行いました。人の手によって適切な間伐や整備が行われないと、不健全な森林となってしまうため、樹木が健全に成長するためにもこういった活動は必要なのだと改めて学ぶことが出来ました。山仕事を行う上で、様々な注意点を伺いましたが、中でも一番耳に残ったのは、16時過ぎの夕暮れが一番危険であるということです。そろそろ終わりが近づくような時間帯においてはどうしても気が急いてしまい、注意散漫になってしまうといいます。
こういったことにも気を付けながら、活動を行っていく必要があり、大変なだけではなく危険とも隣り合わせなのですから、林業に携わる人には頭が上がりません。今回の伐採を行ったのはクヌギ林であり、侵入してきた竹を刈る作業も併せて行いました。細い竹なので伐採はそこまで手間ではないだろうと考えていたのですが、想像以上に重労働でした。作業の上で、前日の助成金を考えると、労力に見合わないと思わざるを得ないため、伐採した竹の活用により利益を上げる方法を考えることは喫緊の課題であると感じました。特に今回刈ったような細い竹は活用に困るらしく、なにか良い活用方法を考えたいものです。
そして、12/1の午後には間伐した樹木がどのように活用されるのかを学ぶため、薪集積場を訪れました。薪として活用するためには乾燥が必須で、これがなかなか場所を取るうえ、乾燥に一年ほどかかるため苦労しているそうです。今回訪れた場所は、もともと学校であり、使用されなくなった校舎を行政から借りているとのことでした。写真のようにハウスがあると雨に晒されなくて済みますが、当然場所が足りないため、外には野晒しの薪が多くありました。
そのため、野晒しの薪は黴てしまったり、虫食いが進むこともありますが、薪としての機能は失わない為、自宅で利用したり、格安で販売したりするそうです。この場所の薪は、東彼杵で伐採された樹木だけではなく、他の地域から輸送されてくるものもあるそうで、それは本来処分にお金がかかるものをここでは買い取ってくれるためだそうです。この薪を販売する事業は好調なようで、こうした環境に優しい事業が、しっかりと利益を出して、継続していける見込みがあるというのは素晴らしいことだと思いました。この薪を使って、今後サウナを経営する予定もあるそうで、ぜひ訪れてみたいです。
活動を通して、生物の声に耳を傾け、自然と共生していくことの大切さを改めて実感しました。また、環境保全活動を行っていくうえで、やはり利益が出ないと活動者も継続した活動を行うインセンティブがなくなってしまうため、利益を出すことは大切であり、ただの慈善活動ではなく、環境保全という新たな産業を築いていくことが今後の環境保全活動の肝であると感じました。また来年に赴く機会があるかもしれませんが、新たに知識を身に着け、また違った観点から活動に関わっていくことが出来れば幸いに思います。
末筆ながら、2日間に渡ってご案内いただいた池田様、並びに関係者の皆様、貴重な体験に加えて、様々なお話を聞かせていただき誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
筑波大学 社会・国際学群
国際総合学類 国際開発学専攻
白川研究室『川と人ゼミ』
伊藤 真人 / ITO MANATO