「太陽、緑、水そして爽やかな空気」に寄せて

20181105 彼杵おもしろ河川団へ寄稿

 はじめに、当方の少年時代、60年ほどさかのぼり、お話をさせて頂きます。

 少年の頃は目の前に千綿川、そこに続く大村湾に沿った水辺の町、長崎県東彼杵町千綿宿郷で70年を過ごし、現在は生家を見わたせる小高い丘の上の家で家内と二人、小さな庭にオリーブやハーブ、モチノキを植え、毎日大村湾と千綿川と町並みを見ながら、東彼杵町首長としての仕事を、私なりに前向きに努めさせていただいています。
 
 少年時代の思い出は今も鮮明に蘇ってきます。
 学校から帰り、家畜である牛を目の前の川の水辺に引いていくと、水浴びをさせた時の「牛の嬉しそうな目」。朝から夕方まで川や目の前の海、大村湾で魚やサザエを採ったり、海岸での焚き火をして食べたりしたこと。

 川や海で泳ぎすぎて唇の色がなくなり、熱い小石を唇に当てていた。
 少年の頃の思い出は宝物として心の中に締まってきました。でも、その思い出を少しづつ引き出して行きます。原点に戻るきっかけとして。

 東彼杵町の行政マンとして、40年近くを勤めさせて頂き「何かを残そう」と思い、首長として8年目になりました。この8年間はまさしく試行錯誤の8年間でしたが、具体的な老人福祉、教育、防災問題等の守るべき課題は押さえつつ、首長として東彼杵の活性化にどう取り組むのか、悩み続けてチャレンジした結果、

 東彼杵町町民憲章「太陽、緑、水そして爽やかな空気」

 の基本理念に立ち帰ることを、町民の方との雑談の中で再認識し原点に戻って考えてみました。

 山と川と海(大村湾)の距離が5キロメートル前後と、コンパクトに圧縮された安全な水辺の風景が、当町には広がっています。これは、長崎県の他の自治体にはない東彼杵町の特長です。そこからの具体的な取り組みを考え続けたところ、鮎の遡上を原点として「川を 森を 大村湾を守ろう」と10年以上元気な活動を続けておられる市民団体「彼杵おもしろ河川団」の方々と知り合いました。対等なお付き合い、そして、肩書きを取り払ったラフなお付き合いを長い間続け、団員の方々との話の中からヒントを引き出してきました。

 このような地域の方々との談話から、心の中にしまい込んでいた「少年時代の思い出の宝箱」が開き、忘れかけていたこの町の風景が蘇ってきました。

 白黒テレビで見ていた「忍者部隊月光」「仮面の忍者赤影」などに登場する「水面をスイスイと立って渡るアメンボウ人間」の映像。私の60年前の記憶。この頃、ふと見たテレビ番組でスタンドアップパドルボートを拝見しました。
「よし、少年の頃の思い出が、この町の元気に活用されないか」
 それから、10月4日。人口5千人の町、北海道のニセコ町へ出張した時、カナディアンカヌー、スタンドアップパドルボート、釣りなど、水辺の遊びに官民一体となり前向きに取り組む、活気のある町に感動しました。

 町民の方々、自治体関係者、地域のNPO団体、森林、山とのつながり・・・
 ニセコ町の人と風景に実際ふれてみて、北海道と九州と、場所や風景は異なりますが、東彼杵の原点・基本理念に返って、当町のこれまで、そしてこれからの取り組みも、ニセコ町同様に、大きな町の活力を引き出せると確信しました。
 
 ニセコ町では、「イワナを守る」活動が30年もの長い間続いており、その現場も視察しました。とても尊敬に値する取り組みでした。  
 このことを町民の方に帰って説明すると、「彼杵おもしろ河川団」のスタートも「鮎の遡上」であり、「水辺の生きものとのバリアフリーを目指す活動からですよ」と、ニセコ町に通じるお話を聞くことができました。生き物との共生を目指す「彼杵おもしろ河川団」という当町の市民団体は、人と人とが繋がり、大きな人脈が拡がり、幅広い活動組織になっていったようです。私も、河川団の方々を通じて、10年以上、水辺の活動に関わってきました。
 
 このような中で、わたしなりの思索が「忍者部隊月光の水わたりの術」からスタンドアップパドルボートに繋がりました。「これはいい!早速広めよう!」と河川団の方々と話が弾み、今、できるだけの相互協力体制のもとで「東彼杵町少年少女海洋クラブ」を作ろうという計画が具現化しつつあります。
 
 人生100年の時代。70歳になっても少年の頃と変わらぬ好奇心に心動かされ、行動し、それを「町の活性化にまで生かして行こう」と思いを共有する・・・ そんなチームが私の周りには、確かに実在しています。
 
 最後に・・・少年時代の思い出を皆様に共有していただき実現に向かって努力出来る喜びを感じています。関係される皆様、今後ともよろしくお願いいたします。

平成30年11月20日
東彼杵町長 渡邉 悟

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